その刻まれたシワが語るもの

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今朝方、己の顔の毛穴を嘆いた事がアホらしくなる。

一昨日、日記を更新した直後、飛び込みの仕事が入ったので予定変更。
本日、『Young@Heart』 を観に朝っぱらから渋谷へ。
既にYou tube上にある泣き映像を、あらかたチェックしてしまっていたため、改めて映画館で観てもどーなのか、とは思っていたけれど、女性割引の日でもあったし、ま、いーか、という感じでいざシネアミューズ。

いやはや、首に巻いていた今治マフラーがジットリする程泣いた。十分笑えもするのだが、同時にウブブブブと泣けた。
平均年齢80歳のコーラス隊が歌う歌はやはり、これまで聴いた同じ曲よりも、何倍も説得力を持ち、心に響くのだった。確実に「歌うこと」は彼らの生きる糧、生にしがみつく大きな理由なのだった。実際、何度か危篤状態まで陥り、枕元に牧師まで呼ばれていた爺が、こちら側に戻ってこられたのは「また歌いたい」という強い思い故だったに違いない。
しかめ面で、耳にティッシュを詰めてしまう程、耳障りな音にしか聞こえないロックを、何故歌うのかという問いに「自分の世界を広げたいのさ」と語る爺の、この期に及んでまだそんな事を言えてしまう凄さに、欲張りというよりも、何か、一周まわって辿り着いた様な謙虚さを感じた。

以前、町山智浩さんが言っておられた様に、この作品はコンサート当日までにメンバーが次々と死んで、ある意味「サバイバル」の様相。生きるか死ぬかである。
つい数日前まで、生き生きと歌っていたメンバーの余命というものが、スクリーンを通して、ちょっとギョッとするほど感じ取れてしまう場面がある。そういう映し方をしているのかもしれないけれど、まるで背後に死神が立っているかの様に、突如としてその人だけが、灰色に見えてしまうのだ。スクリーン越しにこれだけハッキリ見えてしまうのだから、その場にいた仲間達もおそらくそれを察知している。長く生きれば生きるほど、何度となく経験してきた事だろうけれど、その静かで淡々とした悲しみが伝わってきて、もうたまらない。
数年前、私の父が倒れた時も、やはりやたらと白っぽく見えた事を思い出した。白髪のせいもあるが、一人だけモノトーンだった。そうか、そこから戻って来たのだなあ、父は、と思った。

仲間の死を乗り越えて、などと書くと、いささか陳腐な感じだが、しかし重みが違う。乗り越えて、というよりは、その事実に寄り添ってという感じだろうか、いつかくる自分の死を見据えて、彼らは歌う。その姿があんまり力強いので、散々泣いても観終えた後、最高にスカッとする。
この世に生を受けてから、めでたく嬉しい事であるはずの誕生日が、30を超えたあたりから、何やら厄介な事のように思えてくるが、しかし、 70,80を超えたあたりから、また再びめでたいと思える様になるのだ。若いうちは、その一年がいかに貴重であるかまだ知らない。ボーッとしているうちに終わってしまっている。目先の事(顔の毛穴とかね)だけを見ている。もちろん私も。それを、痛感させられた。(誕生日なんか嬉しくないよ、と言っていた爺もいたけれど)

ちなみにこちらはカバーされているcoldplay『Fix You』。断然、爺ボーカルが沁みるのです!


マスカラ落ち気味だったにも関わらず、そのまま映画館の目の前で開催中だったアンドリュー・ワイエス展 をハシゴ。
何とこちらも91歳現役であった。(失礼ながら、まだご存命とは最近まで知らなかった!)
高校時代、課題で模写をさせられたワイエス。残念ながら模写をした作品(確か石造りのバスタブに古びたバケツが置かれたもの)は無かったけれど、習作が沢山展示されていて、とても面白かった。あー、何もわからず「この中から一つ選んで模写しましょう」と先生に画集を渡されたあの時より、今の方がいい模写が出来そうな気がするよ。
展覧会コミュでも話題になっていた今回の展示のために撮影されたらしきワイエスのインタビュー(どこのタレントリポーターかと思いきや、ワイエスの孫娘による)映像も良かった。ご高齢とは思えぬ言葉の数々。「ルールを作らない」、「(作品を生み出す時は)死んだように疲れていても、カチッとスイッチが入るんだ」、「GO OUT AND JUST DO IT」。

「歌うと心が躍るんだ」とコーラス隊の爺も言っていた。ワイエスの「スイッチ」みたいなものだろうか。年をとってから「心が躍る」という事がどれだけ難しい事か。我が父の現在を見ていると思う。してまた自分が老いた時、果たしてそういうものを持てているだろうか。
その刻まれたシワが語るもの。毛穴がどうした。体脂肪が何だ(前の日記が恥ずかしい)。この二本立てを見れば、まだまだ自分が生まれたてのヒヨコに思えた。

オマケ写真は昨日実家から届いたリンゴ。
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※イラストは美術コースの同級生タエちゃん。

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by sakamotochiaki | 2008-12-03 16:53 | ◎こんな日々 | Comments(0)