「イイ臭い」のする映画

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スクリーンから臭い立つオッサンの加齢臭。
年代物の皮脂、煙草の煙、よせばいいのにそこに上乗せされるヘアトニック、血と女と金の臭い。根本敬氏のいう「イイ顔」というのがあるが、これはいわば私にとっては「イイ臭い」だ。オッサンにはそもそも引き算というものが無い。でんでん演じる「村田」というオッサンの何層にも蓄積されたこの「イイ臭い」の濃さたるや。そこへ脇を固める諏訪太朗、私の愛する渡辺哲の「イイ臭い」も合算され、これが満員電車だったら途中下車必至の加齢臭テロ作品、「冷たい熱帯魚」を観てきた。

園子温監督の前作「愛のむきだし」を観た後の私の放心状態は過去に無いものだったので、今回は多少心構えして挑んだのだが、結果的には意味不明の涙がダーダー流れて止まらないなんて事もなく、ただひたすらこれまで見た事もない「狂気のでんでん」に魅入るのみであった。
ああ、何で「でんでん」なんだろう。こんなに恐ろしいオッサンが何故よりにもよってこんなふざけた名前「でんでん」...などという私のどーでもいい雑念も振り払うほどに、「村田」という男の圧倒的な最低最悪ぶりは素晴らしかった。支離滅裂な独自のルール中だけに生き、己を省みる事などない。省みるどころか下品なオヤジギャグと共にそれを振りかざし、他者にも強要する。ズル賢さと力でもって。
あーこんな上司がいたら嫌だ。でも居ちゃうんだろな。実際、田舎にゃあこんなオッサンがゴロゴロいる。ああ、嫌だ嫌だ。
しかし一番嫌だったのは、そんな男のある種哲学めいた説教に、一瞬でも諭されそうになった自分自身であった。物語の主人公(吹越満)の家族も同じく。不安や恐れは一気に心酔に転じる事がある。苦手だったものを好きになってしまうと一層強固な感情となる様に。これは「愛のむきだし」でもそうだったけれど、「そんな馬鹿な」と思う様な宗教にも沢山の根強い信者がいる理由というのが何となくわかってしまう。

残酷描写も多々ある中、時折笑いも起こる(タランティーノ作品を初めて見た時みたいな)。しかしそれはそこが映画館だから他ならない。これが現実に起こった事なのだという事を思い出すと、館内の空気が一段階寒々しく感じられる。
題材となったのは埼玉愛犬家殺人事件であるが、正直今作がなければ私はこの事件に関して殆ど知らないままだった。これほどの大事件が大々的に報道されていていた記憶が無い。(それはこの事件の犯人逮捕とほぼ同時に阪神淡路大震災、オウム事件が起こったから、という事らしい)
犬は熱帯魚に、埼玉は静岡にと設定を変えられてはいるが、様々なエピソードや主犯格の男の言葉などかなり忠実に取り入れられていて、この言葉の凄まじい独自性たるや!書こうと思ったってなかなか書けるもんじゃない。不謹慎承知であえて言うならば、とても「シビレる」言葉なのだ。それだけでもこの男が教祖の様にありえた事を納得してしまう。事実は小説よりも奇なり、いや恐なり。

オッサンオッサンと書き連ねたが、でんでんの妻を演じていた黒沢あすかが良かった。とくにボディ!予想より胸が小さくて、形もそんなに良くなくて、垂れてて、肩幅広いわ、腕も太いわなのだが、エロくてエロくて、凄く良かった。女の体はハリばかりが良さではないのだ。ちょっと食べ頃を過ぎたあたりが最高なのだ。って私がオッサンか。

単館上映という事もあり、土日、水曜レディースデー(平日も時間帯によって)は連日立ち見が出ているというし、さらに先週末TVで取り上げられていた事もあり、むぬ凄く早めに映画館に向かったものの、月曜初回10時半では8割程度の埋まり具合であった。時間帯のせいか、年配の方が多く(意外やオバ様多し)て他人事ながら心配になったが、途中退場される方はたぶん居なかった。皆、でんでんに諭されたか。そんなこた無いか。

園監督はすでに次回作も制作されている様だが、先日Ustでのヤン・イクチュン監督との対談の際、話にも出ていたという『The World Is Mine』をぜひ撮って欲しいなあ。今作の血糊の海を見ていて強く思った。


上映前、呑気にも悪魔の様な男でんでんと記念撮影した坂本。
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※何故「でんでん」かというのを後で調べたら「でんでん虫のように可愛くありたいから」が由来らしい。あーそれで。って何だそれ!もうオッサンにヤラれっぱなしだ!



オマケ。もしもし、あたし、誰だかわかる?(薬師丸ひろ子)
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by sakamotochiaki | 2011-02-08 10:16 | ◎こんな日々 | Comments(2)
Commented by そのだまさあき at 2011-02-10 02:05 x
ツイッターではどうもです。
この間はじめて愛のむきだし見てみたんですがほんと衝撃的でした。なので今回の園監督の作品が非常にたのしみなのです。でんでんさんも楽しみです〜
Commented by sakamotochiaki at 2011-02-10 08:41
そのだまさあきさん
あやや!わざわざコメント頂きありがとうございます!
ツイッターでも駄ツイートにお付き合い頂いて恐縮です。

「愛のむきだし」ご覧になってたんですね。
ならばぜし!と声高に言えます(笑)
監督もおっしゃっていましたが、「愛のむきだし」とはベクトルは異なる作品ではありますが、問題作には変わりないと思いますです。