楳のこと。

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三人展が始まる少し前、ふとした拍子に楳の右脇の下に1cm弱ほどのしこりを見つけた。
よくよく触ってみたらその付近にも米粒大のものが1つ、2つ。指の先にソレが触れた瞬間、どうか脂肪か何かの塊であってくれ!頼む!と念じながらも、いやこれは「再発」だ...と心の奥底では確信していた。手術した時、乳腺腫瘍はリンパに乗って、脇の下や脳にも流れてしまう事があると医師から聞かされていたのだ。

即座に病院で細胞検査をしてもらい、あまりにもあっさりと「再発」との診断が下った。覚悟していながらも診察室で涙が出た。そのたった3週間前の術後1年検診で「異常なし」という診断が下っていて、それまで一週間、一ヶ月、三ヶ月、半年...と少しずつ積み重ねてきた「異常なし」が一区切りして、ちょっと気が抜けていたせいもあり、正直この「アタリ」にはかなり参った。そもそもそれまでが誤診だったのでは?とか、これまでずっと心配してきたチック症状とか、いやそもそも前の病院からの転院時期をもっと早くするべきだったのではとか、色んな「たられば」が頭を駆け巡ったが、それをどれだけ並べ立てようとキリが無く、とにかく今何をすべきなのか、打てる手だては何なのかを考えた。楳はどうしたいか、という事を当然考えてみたのだけれど、結局そんなものはきれい事でしかなく、最終的には私がどうしたいか、なのだった。私が楳に死んで欲しくない、私が楳に苦しんで欲しくない、私が楳と出来るだけ一緒にいたい、でも我が家の経済事情で許される範囲の治療しか出来ない、という様な実に自分本位な理由にしか結びつかないのだった。

長く続く治療の日程を様々加味した結果、三人展の初日の朝、楳は抗がん剤の治療をスタートした。
週に一度注射を打つ。再び手術によって今ある腫瘍を全て摘出するという方法もあったけれど、今度は前回の様な表層部分ではなくて、もっと深々と取り除かねばならず、しかも再発の可能性も高い(実際半年ごとに手術をしている猫もいるそうだ)。ただでさえ病院が嫌いな楳にとって「手術+入院+術後の不自由さ」が多大なストレスである事は前回の経験から容易に想像がついたし、医師も「この子にとっては手術が最善の方法とは言えないかもしれない」と話し、手術は選択しないと決めた。

では薬による治療となるが、あまりにも副作用がひどく、日常生活を送るのすら辛くなる様ならば楳が可哀相だ、というのと、やはりそれを私が辛くて見ていられないのではという不安もあったのだが、家人とも相談した結果、殆ど副作用が無いという抗がん剤をまずは半年間続けてみる事にした。もしも効果があれば腫瘍は小さくなって、ある程度の年月を「共存」という形で生きていけるかもしれない。もしも効果がなければ、もっと強い抗がん剤という選択肢もあるけれど、当然それには強い副作用があって、金額も今の薬の2倍以上に跳ね上がるので、それをするつもりは無い(というか「出来ない」が正しい)。そこまで来たら恐らく自然療法(サプリメント等による自己治癒力向上)に切り替えるつもりだ。今はともかく攻めてみる。
病院嫌いの楳にとって、毎週病院に通う事もストレスには違いないけれど、それでも「入院」よりも「家に帰れる」方が良いと私が判断した。現在治療を始めて3週目。実際、今でも迷いながらの日々だ。けれど、いよいよ治療を始めようという時期に、楳が珍しく私の目をやけにジッと見つめて、右手をグーンという感じで私の方に差し出した。私はそれを「合意」と見なしたのだった。本当にどこまでもつくづく私は自分勝手なのだ。

治療を始めた日から、今までがっついていたカリカリの食いつきが悪くなった。副作用が殆どないとはいえ、強敵と戦おうという強い助っ人にこちらも加勢してもらっているのだから、何らかの影響はあるのだと思う。かつお節には飛びついてくるので食欲が落ちたというよりは好みが変わってしまったのかもしれない。でも凄く具合が悪そうとか、そういう事ではなく、これまで通り寒いと日がな寝てばかりで、朝6時には噛み付いたり、鳴いたりして私を起こす楳だ。相変わらず眼光も鋭い。

楳の再発の診断が下った日は、寒い冬の雨の日で、奇しくも楳を保護した日を思い出した。あの日も真冬の雨の日で、ガリガリにやせ細り、毛並みもボロボロで、ひどい猫風邪をこじらせていた楳は、うちのマンションの郵便受けの下で丸まって動けなくなっていた。それまで敷地内で野良猫など見た事もなく、今思えば本当に不思議な出来事だった。楳は寒さと飢えをしのぐために必死でたまたま辿り着いたのかもしれないけれど、もう運命だったと思う事にしている。瀕死のところを拾われて辛くも生き延びた特大ラッキーと、まだあまりにも若くして乳がんを患うという特大アンラッキーの振れ幅の広さに、悔しくはあるけれど、そうか、楳はどこまでも「そういう猫」なんだ、という気持ち。私の人生一匹目の猫はこんな所にすら個性がハンパないんだと。さすが楳だと。




神様、どうかもっともっと楳と一緒に居られます様に。
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by sakamotochiaki | 2011-12-01 22:44 | ◎楳猫 | Comments(2)
Commented by junko at 2011-12-04 17:34 x
楳ちゃん、心配ですね。
術後検診も順調のようでよかったなと思っていたのですが、、、。
でもご家族の愛情をいっぱい蓄えてる楳ちゃんならきっと大丈夫。負けないで頑張ってくれますよ。
不安と心配が尽きないと思いますが、がんばってください。


Commented by sakamotochiaki at 2011-12-04 18:35
junko様
わ〜有り難うございます!
今日、豪徳寺(招き猫で有名な)に出向いて病気平癒のお札を作ってもらってきました!ご利益あると良いなあ。
ともかく日々を楽しく過ごせる様、気負い過ぎずにがんばります。