レビュー5月

本『ZOO1』乙一
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猛烈に読みやすかった。妙な小賢しさを感じない文章が、余計に巧さを感じた。
筒井康隆、楳図かずお、伊藤潤二を思わせるホラーの中に混在するユーモアがとても良い。ファンタジーな雰囲気も。
『カザリとヨーコ』は特に気に入った。寓話的な恐ろしさがあるのに、ヨーコの台詞で「プッ」と笑わされる。
『SEVEN ROOMS』は、理解不能の恐ろしさとグロさの中に切なさと愛があり、脳内で勝手に楳図漫画の絵柄に変換され、心で悲鳴を上げつつ読んだ。
ファンタジーっぽい話は苦手な方だけれど、たまには良いもんですね。

本『愛がなんだ』角田光代
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またしても、という感じで愚かな女の物語だった。 もうホントにしょーもない。
けれど、主人公テルコの様な女の子を私は知っているし、実際世の中には掃いて捨てるほど居るだろう。端から見たら本当に情けなくなるが、自分にもその要素がゼロとは言い切れない。
馬鹿じゃないのと呆れながら、文字通り全てを犠牲にして男のために生きてしまうテルコを何処かで羨ましいとも思ってしまう。あーあ、とため息をつきながら、全くアンタは理解不だよと思いつつも、それでも懲りない彼女の愚痴を聞いてあげてしまうグダグダな女友達気分で読んだ。そして最後はちょっと泣いてあげた。

『ロック母』角田光代
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『父のボール』がひたすら重かった。が良かった。
凄みのある文章に、読んでいて体温は上がるのに、血の気が引いて行く気分。
『ロック母』は打って変わって少し救われる気分。
角田さんは近しい人間ならでは複雑な関係性や、暗部の描き方が本当にえげつない。しかし、そこには嘘が無い。だから、ただただ受け入れてしまう。

コミック『キーチ!』新井英樹
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実は読むのを途中で挫折していた作品。
所々重なる部分があったせいか、『The World Is Mine』ほどは入り込めなかったというのがある。で、ようやく読み終えて、相変わらず新井英樹という人の一貫した主義主張の骨太さを知る思いだった。 物語こそ違えど、その矛先は同じなのだなあ。キーチの振り上げた拳は、そのまま新井英樹の拳なのだろう。
これからも誰にも描けない漫画を、ひたすら描いて行かれるのでしょう。
先が長そうな、追いかける読者も十分な体力と覚悟を要する作品。
でもやっぱり私は『TWIM』の方が好きだ。現実と非現実の混在の妙が、どうにも忘れられない。『キーチ!』では物足りない。進行中の『キーチVS』に期待します。
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by sakamotochiaki | 2008-05-31 22:09 | Comments(0)