他人に住まれる、声はすれども、しがみつき女

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先日ワイドショーでこんな事件を報じていた。
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<押し入れの天袋に女 マットレス持ち込み、隠れ住む?>

 民家に忍び込んだとして、福岡県警粕屋署は28日、住所不定、無職堀川タツ子容疑者(58)を住居侵入の疑いで現行犯逮捕した。押し入れの天袋にマットレスが持ち込まれており、同署は数カ月間隠れ住んでいた疑いもあるとみている。堀川容疑者は「住む所がなかった」と話しているという。
 調べでは、堀川容疑者は28日午後3時ごろ、同県志免町の無職男性(57)宅に侵入した疑い。
 男性は一人暮らし。家の中で食べ物がたびたびなくなったことから、何らかの反応があると画像を携帯電話にメールで送る仕組みの警報装置を設置。28日午後に外出した際、家の中で人が動き回る画像が携帯に送られてきたため110番通報した。駆けつけた粕屋署員が、天袋に隠れていた堀川容疑者を見つけた。
 同容疑者は以前にも男性宅に侵入したことがあるらしい。天袋にはペットボトルなども持ち込まれていたという。
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驚いた。そんな馬鹿なとはこの事だ。いったいどうやって日がな過ごしていたんだろう。そもそもどうやって他人の家に。その中でも「天袋」に導かれた経緯は。(ストーカーって事では無いらしいし)しかもオッサンであればまだしも(まだしも?)、オバハンという所が、何ともはやである。切なさ、不憫さを通り越して何とも怖い。気になりすぎる。もっと詳細プリーズッ。である。

と同時に、このニュースを聞いて、真っ先に私が思い出したのは1992年に上演された大人計画の舞台『冬の皮』だった。
冬の次に冬、そのまた次に冬が訪れる、春が訪れる事の無い町「カルナバル」で繰り広げられる切ない物語。松尾作品の中でも珍しくファンタジー感漂う、私も大好きな作品だった。(って、実は私は学生の分際で、その公演チラシを描かせていただいたのだった。コレです↓)
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そこに登場するのが「他人に住まれてしまった」姉弟。自分らが暮らす家を見知らぬ男に10年間も勝手に住まれていたのである。壁と壁の間のほんの少しの隙間に、つまり元々の壁と、姉弟が気づかぬうちに勝手に増築した新たな壁との隙間に10年も。しかもバレない事をいい事に、男はその隙間をちょっとずつちょっとずつ広げていき、家はちょっとずつちょっとずつ狭くなる、といった何とも荒唐無稽で、素晴らしく馬鹿馬鹿しい設定だった。当然というか、私はこの部分が大好きだった。

形こそ違うが、あの馬鹿馬鹿しい「知らない間に他人に住まれていた」というフィクションが、現実に起こるとは、本当に驚いた。ま、まじぇえ?思わずアホな若者口調にもなる。
そんな所(天袋)に住まねばならなくなったオバハンの事情は相当悲しいものだろうし、住まれていた事を知った時のオッサンの驚きと恐怖も想像を絶するが、しかし、最終的にはやっぱり笑ってしまうのだった。こんなズルイ現実を見せつけられて、昨今のバラエティ番組が面白く感じる訳が無いよ。

話は変わって、先日我が家のベランダで洗濯物を干していたら、どこからともなく
「日当りのいいマンションってのはいいなあ…。
 洗濯ものなんか、すぐに乾くだろうねえ…。」
という声が聞こえて来た。低くしゃがれたオッサンの声だ。
最初は「ああ、いいねえ。確かに乾くねえ。」と無意識に心で相槌を打っていたのだが、はた。とその言葉が自分に向けて発せられたものだと気づいた。というのは、家のベランダ(2階)で洗濯物を干していて、誰かから突然何の前振りもなしに話しかけられるなんて事は、まあ、無いからである。
だ、誰!?と周りをキョロキョロ見回すも、声の主は見当たらない。方向的には、我が家の真向かいにあるK病院からである事は間違いなかったが、どこから聞こえているのか限定できない。すると
「フフフフフ…。」
とオッサンの笑い声。こ、こえーよ!!!しかも私と言えばあられもない姿(ボーダーマン+寝癖+スッピン)、そんな姿を何処の誰だかわからないオッサンに一方的に見られているなんて、余計こえーよ!!!と、洗濯も途中でそそくさと部屋に入ってしまった。入院患者さんの闘病中の気分転換の1コマだったかもしれず、ちょっと可哀想だったか?とは思ったが、でも怖いもんは怖かった。せめて「おはようございます。いい天気ですね。」から始めてもらえたら、まだ対応しようもあったものだが。(そうか?)

さらに話は変わって、先ほど私用で新宿へ向かう総武線車内で、「自分が最も良かった時代にしがみつき続ける女」を見た。
年の頃は40代前半だろう。昔はブイブイ言わせてた(この表現もどうかと思うが、そういう感じ)んでしょうなあ、という可愛らしい顔立ちなのだが、まあ、年相応にシワもたるみもある。髪は茶髪に巻き髪、中途半端なチェック柄のフリル付きブラウスの上に重ね着するのは、デニム素材のビスチェ、フリフリ膝上ミニスカートに、生足+フリンジ付きサンダル、同じくコレでもかとフリンジのついたピンクのスエードのバッグ、とどめに瞼がたぶんアイプチ。どれ一つ取っても、見事に欲しいと思えるアイテムが無かった。ついつい上から下までがっつり眺めてしまった。(でもこの手の輩は大丈夫。目が合っても「私があんまりイケてるからって見てるのねん」って思うだろうから、逆に見てあげると良いと私は思う)
確かに年齢の割にはプロポーションは崩れていないし、巨乳だし、必死に重力に抗い、努力しているのはわかるのだけれど、あの過剰なまでの過去へ、若さへの「しがみつき」ぶりは目にツーンと痛かった。もっと普通の、シンプルな格好をしたら、100倍ステキな女性になれるだろうに。
して隣に居た旦那さんと思しき男性が、これまた対照的な乾涸び方で、やせ細り、疲れきった様な、諦めきった様な表情で、10回くらい会わないと記憶に残らない様な存在の薄さで、彼女のフリンジバッグを指差して、
「それ、凄いね…」
と言うと、彼女はイタズラっぽく笑って、
「にしきのあきらあああー。西城秀樹いいいいいー。」
と、指で摘んだフリンジを、彼に向かってフリフリしながらギャグとも思えぬギャグをかますのだった。
例えが古!!!

新宿駅に付くと、旦那を気にもせず、ツカツカと先に歩き去るフリンジ。後をトボトボ追う旦那。アッシー君、メッシー君時代のカップルの、ひょっとしたら生き残り(化石級の)だったのかもしれないなあ、と思った。
そして、いつまでも若く可愛くはありたいのは、私も例外ではないし、変わらない事や物には素晴らしいものが沢山あるが、それに対する過度なしがみつきはとことん見苦しく、どんなに表に出ていても、扉の内側に引きこもっているのと同じ事であると改めて思った。
歳は自然に取りたいものだ。
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by sakamotochiaki | 2008-06-01 17:20 | ◎こんな日々 | Comments(0)