バナナとパイナップル

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東京に戻りました。
夜10時に帰宅するなり仕事少々。クタクタ。クタクタ過ぎてこんな時間まで目が冴え冴え。

今回の帰省は何やら疲れた。学生時代などは、帰省と言えば、ひたすらダラダラして、親に美味しいもん食べさせてもらって、ゴロゴロして、また食べて…を繰り返し、完全な「休暇」という感じだったけれど、いつ頃からかそうはいかなくなった。まあ、親が年老いたというのはありましょうな。

しかも実家滞在中、何かと口喧嘩が多くて(仲裁も含め)、それも疲れた。
父の偏屈ぶりは相変わらずで、もはや「偏屈師範代」という感じで、そのやり取りに疲弊する。先日参加した老人会の日帰りバス旅行も、残念ながらちっとも楽しめなかった様で、同行者に骨折者が出るというトラブルもあり「もう行かない」との事。これがキッカケになり、心身共に外に向く様になってくれたらと思っていたのだけれど、今月誘われていたイベントも断ってしまった。

前の日記で公言していた通り、父と観に行った『相棒』でも、ラスト10分というところで、父の尿意に屈してあえなく退場。
まだもうひと種明かされそうなまま、後ろ髪ひかれつつ消化不良のまま。あんなに楽しみにしていた割に、父は残念がるでもなく(この辺が物事に執着ゼロの父らしいのだが)、その後、散歩用のスニーカーとサンダルを欲しいと言うので買ってやり、「はなまるうどん」を食べたいというので食べたら「固過ぎて噛み切れない」と文句を垂れ(コシだよコシ)、歩き疲れたら(って平日のジャスコ店内一往復のみ)「もう帰る」と自由人ぶりを余す事無く発揮するのだった。半日父接待で私は白髪が増えた気がした。
あとはひたすら運動する様に発破をかけつづけたが、以前父のために買ったスッテッパーマシンを何故か私がワシワシ踏んでいるという事に。帰省して体重が減ったのは初めてだった。

話は変わって。
母はお酒を飲むと気分が良くなるのか、ちょくちょく自分の若い頃の話をするのだけれど、今回は夕飯時にワインを飲んでいて、何故か父が母と結婚する前に付き合っていた元カノの話になった。早い話が、その女性に父はフラれてしまったのだ。そうでなければ、私もこの世には居ない訳だが、その大まかないきさつは、以前にも酔った母から聞かされていたのだが、今回は新たに細部まで事細かに、まるで当時に戻ったかの様に話し始めた。

いくつかの職を経て、20代前半に自衛隊に入隊した父は、青森を離れ埼玉に移り住まねばならず、当時付き合って彼女をいずれ呼び寄せるつもりで、遠距離恋愛をしていたそうである。当時は今と違い、手紙が主な連絡ツールであったため、父はよく彼女に手紙を送ったのだが、様々な理由から、彼女の両親に交際を反対されていたため、まともに手紙を送っても彼女の手元に届かないかもしれなかった。
そこで父の学生時代からの親友らが、素晴らしい連携プレーを見せる。まず父の送った彼女宛の手紙を、父の友人で地元の郵便局員だったTさんが受け取る。それをもう一人の友人Uさんに配達する。それをUさんが彼女に手渡すという寸法。完璧な職権乱用で、いくら昔とはいえ、田舎とはいえ、バレたら大変だったろうけれど、持つべきものは友とは良く言ったもので、何とも甘ずっぱいイイ話である。しかも私はそのお二人とも面識があるせいで、余計に面白みが増した。こういう話を聞くと、「親が生まれた時から親だった訳ではない」という当たり前だけれど、どうにも実感を持ちづらい事実をグッと受け入れやすくなるよなあ。

しかし、その友人らの協力の甲斐無く、なんと彼女は親の勧めでお見合いした教師とあっさり婚約してしまったのだ。当時としては、安定した地位、将来有望、高収入の相手である。全く無理もない話だと思う。
そうとは知らずにいつもの様に父は彼女宛に手紙を書いた。そして、送られてきたそれを受け取ったTさんは、彼女に届ける訳にもいかず、Uさんと相談し、そこで何故だかわからんが、友人ら数人でそれを開封しようという事になった。それも友情故だったのだろうか。するとそこには「もうすぐこっちに呼ぶから」という、父の彼女への熱いメッセージがしたためられていた。
なんと、なんと哀れな父!
「そりゃあひどい。そんな女、結婚しないでよかったじゃーん!」
と酔っぱらい娘(私)は父を半笑いで励ますも、父は無言で焼酎をチビチビ。
して、何故母が、そんな父の失恋物語の一部始終を知っているのかといえば、母もその手紙開封メンバーの一人だったからに他ならない。当時、男女数人でサークルを作ってつるんでいた仲だったそうなのだ。「まさかお父さんと結婚するとは思ってなかったからさー」と酔っぱらい母。まあ、かく言う母も恋に破れ(この話も過去に散々聞かされている)、似た境遇同士の父と結婚する事になり、埼玉に呼び寄せられて早幾年、来年金婚式だというから凄い。

母の話は終わらない。
その後、父はその彼女にニ度再会しているという。一度目は私がまだ母のお腹にいた時(て事は38年前)、父が地元に帰省した際、駅前で偶然遭遇し、喫茶店で2人でお茶をしたのだそうである。彼女が父に当時の事を詫びたのか、言い訳でもしたか、ただ昔話に花咲かせたのかはわからないが、別れ際、父は近くにあった果物屋でバナナを買い、彼女に持たせたそうな。「当時バナナったらさ、高級品だからさ」と母。

二度目は数年前、叔父(父の弟)の同窓会が地元で催され、父がその送り迎えをした際、叔父の同級生で出席していた彼女と遭遇。かつての父の恋敵だった旦那さんは既に亡くなり、彼女は未亡人となっていた。帰宅した父と叔父は口々に「太っちゃってよー」と、彼女の大変な変貌ぶりを口にしていたそうな。
一通り聞き終え、私が
「いや、それにしてもバナナは良かったね。
 いい話だ。想像したらいい絵だよ。」
としみじみ言うと、父がボソッと言った。
「パイナップルだよ…。」
……爆笑。パ、パ、パイナップル?パイナップル!!
かつてこんなにパイナップルが愛らしく耳に響いた事があっただろうか。哀愁を帯びて聞こえた事があっただろうか。でもやっぱりちょっと間抜けに聞こえるのは何でだろうか。バナナという絵も相当に良かったが、パイナップルとはさらに良い。シルエットが良すぎる。秀逸すぎる。 しかもバナナより高級品じゃないか。そこは訂正せずにはおれないわな。父よ男だねえ。
「あら、そうだった?ごめんごめん。」
と言う母は涙を流して笑っている(ひどい)。
父は、ばつが悪くなったのか、そのままソファにふて寝してしまった。笑って悪かったよ。しかし、今回はこれを聞くために帰ったくらいの収穫に思えた。
今後、パイナップルを見る度に、思い出しては笑ったり、泣いたりしてしまうのは間違いない。

あ、今日の版画。 父のデリケートな記憶はこんな風だったかも?
タイトル『柔らかな丘』
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写真も色々。
ホヤは旨いねえ。
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田舎の空は広いねえ。
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安いねえ。(稚貝だけど)
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最近の米軍ハウスは味が無い。
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実家の裏の林が売り地になってた。
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by sakamotochiaki | 2008-06-14 02:25 | ◎こんな日々 | Comments(0)