西日暮里ハーメルン

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私の母という人は齢70を超えても、1週間のうち1日でもボーッと家で過ごすという事が無い。流行りのスローライフなど、母からは程遠い場所にある。その体力も尋常ではない。朝は趣味の山登りのためのトレーニングと称し、1時間のウォーキングに出かけ、神社の長い階段を3往復もする。夜なんか、平気で2時3時まで起きている。寝る前に腕立て伏せもするらしい。その強靭ぶりが、実の娘ながらかなり恐ろしい。
もう歳なんだから、たまにはゆっくりと、家でダラダラと、煎餅バリバリやりながら、お茶飲みながら、ワイドショーでも見たり、みのさんに諭されたり、しょーもない主婦の様な時間を過ごせば良いのに、と思うが、泳ぐのを止めると死んでしまうマグロのごとく、そうしないと生きておれない人なのだろう、母は。

ここ数日、私も何だか忙しく過ごしていて、まあ、これは週末の逃避行を前に、様々こなすべき事があるから仕方ないとして、母は基本的な生活がコレなのかと思うと、やはり恐ろしい。私は一日に2つ用事をこなすだけで限界を感じるのに、母は3つ4つとこなそうとする。しかもそれが売れっ子芸能人の様に無茶区茶なスケジューリングだったりするため、しばしば破綻する。端から見ていてもそれは予想出来るので、余計ヒヤヒヤする。私はこのヒヤヒヤが嫌なんだな。だから2つ位がちょうどいい。


今朝は起きたらスコールだった。
まるでバリのウブドに居る様で、朝から浮き足立った。今日は田中泯さんの場踊り最終日を観に行く予定だった。ああどうか、この雨が15時まで続いてくれます様に、と主催側の苦労をさておき願い、押し入れからアウトドア用の雨合羽を発掘。傘なんか差してられっかい。泯さんと同じずぶ濡れで見なくては。と思った。
しかし、スコールというのは実に短命。昼過ぎにはスカッと上がり拍子抜け。まあ、晴れてくれたらそれにこした事は無いけれど。

一緒に行く予定の山田美容室の山田さんと、写真家の杉本文さんと合流する前に、一足お先に今日の「場」である西日暮里「諏訪坂ガード 第2自転車駐車場」確認。これがまた「よくぞこんな場所を見つけたなあ」という空間だった。
山手線の外側からの入り口↓
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内部の照明が嘘みたいな青↓(後で聞いたら、犯罪抑制効果があるんだとか)
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ガードを抜けると階段↓
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振り返るとこんな感じ↓
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まだ観客も居なかったので、ひんやりと静まり返っていて、一人興奮する。そしてまた蚊に刺される。6箇所も!

2人と合流後、再び開始5分前の場に戻ると、何処から出没したのか50人ほどの観客がガードを抜けた狭い階段の上に下に集まっていた。
既に階段の中腹でフェンスにもたれている泯さんのすぐ横を、山手線がごう音を立てて通り過ぎて行く。それとは逆に、ゆっくりと静かに始まる瞬間を、皆見守っていた。
途中、いつもそこを通り道にしている人々も、踊る泯さんの横を通り過ぎて行った。ああいう時、何が起こっているのかわからないまでも、わからないままに「どうも。失礼します。」という感じで、速やかに通り過ぎて行く人々を見ていたら、ああ、ここは東京なんだなあ、と何となく感じた。

ケンタッキーフライドチキンを歩き食べしながら、いつもの様に階段を上りきろうとした小学生男子2人組は、異様な雰囲気に「何だ何だ」という感じで、ちょうど私の前に立ち止まって、泯さんを見ていた。
と、私の横に居た女性(30代後半くらい)が「(階段を)行ってもいいんだよ」と囁いて、彼らを促したので、「あ、」という感じで二人は階段を上っていってしまった。
あーあ、余計な事を。と私はがっかりした。大人とは本当に余計な事をする。意味なんかわからなくても、彼らもその場で見たかったかもしれないのに。何かのキッカケになったかもしれないのに。飽きたら勝手に去って行っただろうに。たぶん女性は、自分が邪魔をされるのが嫌だったんだろう。
まあ、その後ケンタッキーの2人組はまた階段を戻って来て、泯さんの真横でちら見して、また去って行ったのだけれど。

今日は土曜日の「五重塔跡」以上に、一般の人もカメラで写真を撮りまくっていた様だったけれど、やっぱり私は自粛。スタッフの方も、随分とピリピリムードだった。予想以上に人が集まってしまったのかもしれない。
一人マナーが最悪なオバハンが居て(写真を撮る度に「写真を撮影します」「撮影した画像を保存します」とか人の言葉をしゃべりやがる携帯だった)、本当にビックリしたが、もーなんか、ああいう人にはなるまいという強い気持ちが持てたので良しとした。良しとしたけれど、私は、だからといって、舞踏に詳しい訳でもないし、本当の所で、舞踏をたぶん全くわからない。だから言ってみれば、このオバハンと別に何も違わないのかもしれない。冷やかしお断り、とでも言われたら、それでも行ける自信は無い。逆に「これがわからない様じゃねえ」みたいな通っぽい人はもっと苦手だ。私はただその場で見て、何だかわからないけれど心が動かされて、その後無意味に全力疾走したくなったり、大酒を飲みたくなったり、トイレに引きこもりたくなったり、わざと遠回りで帰ったり、こんな風にダラダラと文字が書きたくなったり、それだけなのだな。舞踏に関して語れるものなんか、無いのだ。

階段を長い長い時間をかけて下る泯さんを中心に、観客は観客で即興フォーメーションを次々と変えて付いて行く。大勢の大人が、皆なるべく音を立てない様にと配慮しつつ、ゾロゾロと中腰で移動する様子が、奇妙な群舞の様で面白かった。
いよいよ泯さんがガード下の自転車置き場に移ると、下見時よりも自転車が増え、一層狭くなった通路の人口密度は、諏訪坂ガード史上過去最高長(だと思う)となり、後半は殆ど泯さんの姿が見えなかったけれど、フラフラと出口の光に向かって踊り、前進して行く黒いシルエットに、ゾロゾロとついて行く様子は、「ハーメルン」の鼠を思い出させた。先回りをして、ガード下の出口から、その様子を見ていた人には、どんな風に見えただろう。電車の車窓からたまたま見た人は、何と思っただろう。

通り過ぎる電車のリズム、いつの間にか泯さんの顔によじ上ったアリンコ、頭上を飛ぶヘリコプター、誰かが蹴つまずいて倒した自転車の音、青い光、階段の手すりを掴む大きな手、壁に着地した足、へし折れた帽子のつば、片方だけのサンダル、汗の匂い。

今日の記憶。


その後、3人でマックでダラダラとお茶しつつ、男ウケと女ウケの違いなんかの話をしつつ、私が仕事があったため夕方には解散。健全。
で、帰るなり仕事。お腹も減ったが、何を食べていいのかわからず、そういう時は決まって蕎麦。蕎麦の季節です。


オマケは昨日の料理教室の写真。
「ごぼうと人参のカツ」が驚きの美味しさ。デザートの「マクロビレモンケーキ」まで教わって、毎度大変充実した内容でありました。
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あとね、クーラーのダルさに負けて買いました↓
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毎度よろしくどうぞ
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by sakamotochiaki | 2008-07-09 00:37 | ◎こんな日々 | Comments(0)