カテゴリ:未分類( 15 )

DVD『アヒルと鴨のコインロッカー』
c0138553_1538418.jpg

「難しいなあ」が全体的な印象。 文章で読む分にはスッと吸収出来る伊坂幸太郎独自の、そこが一番の魅力ともいえる「ちょっと鼻につきかねないカッコ良さ」を持った言葉達を、改めて音声で聞く気恥ずかしさ。 頭の中で鳴り響いていたディランの歌声を、実際耳にした時の違和感。小説の中で可能であった世界を具現化する事に、健闘しているとは思うのだけれど、拭いきれないこの残念感。所々「えーっ、このメイク、そりゃないよ」と冷める気持ち。
ただ、ドルジが二人を失い、たった一人になった姿は、 異国で疎外され続けた者の底知れない淋しさを感じたし、 明け方の草むらを抜けて行く場面の美しさは印象深い。
映像化した意義を感じた部分ではある。
ハローバイバイ関暁夫、田村圭生のリアリティは良い。 キャスティングを知った時から不安だった大塚寧々も意外と良かった。


空気公団『融』
c0138553_15385392.jpg

持ってはいたのに、ちゃんと聴き込んでいなかった様で、
春の強風吹き荒れる中、不意をついて耳に飛び込んできた『ビニール傘』の良さに驚いて、『うしろ前公園』で心を奪われて、『融』が終わる頃には本当に心が融解。 寒かったけれど、いくらでも歩けそうだった。
冬が一進一退を繰り返しながら春に変わって行く季節に、憎らしいほど似合う一枚。
[PR]
by sakamotochiaki | 2008-02-28 15:43 | Comments(0)
c0138553_1275635.jpg

思えば私が初めてキセルのライブを観たのは、当時横浜にあった、今はもう無くなってしまった洞窟レストラン『クーカラ』だった。確かツアーのオマケの様に、突然決まったライブだった様に思う。そんな状況にも関わらず、二人さえ居れば何処にでも行けるというスタイル(それは全国津々浦々という意味でもあり、世界各国という意味でもあり、実存しないどこか遠くの世界という意味でもある)に魅せられた。二人とその音楽は、ささやかだけど身軽で、どこまでも自由に見えた。
その本編とも言えるライブを収めている今作は、まるで一場ものの芝居を観ている様な気分になる。 歌声と様々な音色、二人のあうんの呼吸、その世界観をますます増幅させる映像により、小さな部屋(ステージは四畳半にちゃぶ台というセット)は何処までも遥か遠くに広がっていく。 特に『雪の降る頃』から『星空』にかけての流れは 、ちょっと目眩がするくらいイイ。 タイトル通り、体の隙間という隙間から入り込んできて、完全に包みこまれる感覚。 いや、参りました。
[PR]
by sakamotochiaki | 2008-02-15 12:14 | Comments(0)
c0138553_1053715.jpg

東京に雪が降った発売日、
いそいそと買いに行く気分は何だか初詣の様で可笑しかった。
キセルの音楽が、ぼんやりと優しく奥ゆかしいのに常に力強いのは、
表現者として二人の意識にブレがないからだろう。
振り向けばキセルがいる安心感。
そういうアーティストはなかなかいない。

「眠る人」の歌い出しには、思わず「うわぁ」と声が漏れた。
タワレコ予約特典CDに収められた「くちなしの丘」も、
これが本編ではなくオマケであるという事が信じ難い素晴らしさ。


昔描いたキセル兄(オマケ)↓
c0138553_106619.jpg

[PR]
by sakamotochiaki | 2008-02-03 10:07 | Comments(0)
c0138553_1714563.jpg

「何故、下北がそういう場所に選ばれたのか」という問いに、長年下北に着目し続けた映画監督の土本典昭氏は「へんぴだからですよ」と答えた。即答だった。
「便利なら東京湾に作ればいいんだ。あそこだったら人を殺しても大した数は死なないから」と。
或はイギリスで「放射能汚染から環境を守る会」の活動をされている女性は「何も起こらないうちは施設を支援する。がんや放射能に関連する病気を発症して初めて疑問を持つ」と言った。彼女の息子は放射能が原因と見られる白血病であった。

これらの言葉が何もかもを集約している。
もしも風や海を伝って遠方に暮らす自分たちの場所まで害が及ばなければ、その被害が六ヶ所だけで済んでしまうのならば、人々はこの件を問題視しただろうか、と考えてしまう。 これまでずっと面倒ごとは皆日本の端っこに追いやられてきたじゃん、という話だ。もちろん私も含めてだが。

しかしこの年末年始、実家のある三沢(ここはここで米軍基地問題も抱えている)に帰省した時、両親も幼なじみもその家族もこの映画の事など全く知らなかった。というより、この六ヶ所にも程近い地域ですら、その感心はひどく薄いのが現実。圧力などもあるだろうから、なかなか地元での上映も難しいのかもしれないが、農業や漁業などの、一番最初に打撃を受ける職業であったり、自らの興味を持ち探っていく様な事でもない限り、ただ漫然と生活している状況では情報は入らないのかもしれない。
それは青森出身の私ですら、この作品を今さらようやく観ているという事でも言えるだろう。知らなすぎるのだ。前半に登場する漁師達とデモ隊衝突の場面など、あれほど激しく異様な出来事をコレまで全く知らずに(或は気に留めずに)いたという事も、自分で驚いてしまう程だった。

と同時に、核燃を大きなビジネスチャンスととらえるクリーニング屋経営者の姿もまた真理。もし私が彼だったら、間違いなく同じ行動を取っている。この後の人生、食いっぱぐれないためには選択肢は無い。彼もまた必死なのだ。「利権」というものがプンプン臭ってくる登場人物ですら「六ヶ所の未来を、発展を考えて」という気持ちに嘘は無い様に思えてしまった。

いずれにせよ、この作品は非常に良い作品には違いない。
少しでも偏った雰囲気を感じたら、恐らく最後まで観ていられなかったと思うけれど、そういうものは無かった。
私に美しい言葉で感想を書く事は出来ないが、ことあるごとに聞こえる「やませ」の轟音が、昆布小屋の婆達のディープな訛りが懐かしい記憶とも結びつき、余計に苦しい気持ちになった。

写真は完全無農薬の米を作る苫米地さん。実家の近所のおばちゃんそっくり。
c0138553_16464078.jpg


※上映会が託児付きというものであったため、子供釣れ参加率が高かったのだけれど、皆映像に興味は無いものの上映の妨げになる様な子供は一人もおらず、実にスムースで良かった。最後の方で何故か全裸で走っている子は居たけれど(イラスト参照)。平和な眺めだった。
[PR]
by sakamotochiaki | 2008-01-21 17:06 | Comments(0)
c0138553_12472132.jpg

「こだわり」とか「ポリシー」みたいな、そんなたいそうな事は一切ございませんが、何となくタイトルは一見でそれとわかる様なものには、これまであまりしてこなかったと思いますが、今回は特例。

映画『眠り姫』試写@下北沢シネマアートンに行って参りました。
原作は私が好きな漫画家の中のお一人である山本直樹氏。と、公言しておきながら、実はこの原作を読んだ事が無かった。アイタタタ。というのも、私が所持している山本作品は殆ど古本で入手したもの(コレを言ったら友人から「わーソレ、勇気あるー」と言われたりもした。これには「ナニに使われてるかわかったもんじゃない」という意味が含まれている訳だが。まあ、確かにね。)なので、たまたま持っている本には収録されていなかった作品だった。

で、この映画の存在自体も知らず、さらに失礼ながら監督・七里圭氏の事も存じ上げなかったのだけれど、たまたま知った公式ページを見てみたら七里監督は過去にも山本作品を映画化されている方だというし、「人が姿を見せない映画」で出演者は皆「声」の出演であるというし、その中に私が今、何を演ろうとも無条件に認めてしまう希有な役者・西島秀俊の名前を見つけたりもして、即刻試写会応募の申し込みをしたのだった。

で、行ってみたら意外な事に女性が多い。いや、意外ってのは違うか。逆に納得というか、確信した、という方が正しいかもしれない。山本直樹と言えば、私がかつてそうであった様に「ただのエロ漫画」と思っておられる方も多いと思いますが、いや実際にその「エロ」度は相当なものではありますが(ご本人も自身を「エロ漫画家」と言われていたりもするし)、それ故にパッと見で女性には特に敬遠される事の多い作家さんでしょう。(絵柄もちょっとオタクっぽくもあるし)
でも、何か違う。山本さんの描くエロは言わば「必要エロ」。私もたまに男性誌などからお仕事を頂くので、何冊もご送付頂く訳ですが、そこに掲載されている言わば「無駄エロ」漫画とは、こうして今便宜上とはいえ、その2つを頭の中で比較してみたりしている自分が嫌になる程に別モノなのです。 ただ漫画を読んでいるという次元ではない世界を、極めて繊細で綿密に見せてくれる作家だと思います。
昨日会場に集まっていた女性は(全てとは言いませんが)、少なくともそういう山本ワールドが好きで、むしろ女性が読めばハマる作家なのだと勝手に確信し、勝手に自己満足した私だった。


前置きが長い。しかも山本直樹の話だし。
このくらい長いと、チェックに来られた試写会関係者の方も、読むのが面倒くさくなって飽きて帰っちゃうかなあという頭もあったり無かったり。
しかも、さらにちょっと続けて書いてしまうと、実はこの『眠り姫』という原作漫画は、内田百?が書いた『山高帽子』がモチーフになっているという。て私、そのどちらも読んだ事が無いってどうなの、ちょっとそれは読んどきたいかも、と試写二日前に試写当選の知らせが届いてやっと思い始めた。
で、当日、開店直後の高円寺文庫センターをチャリ襲来。『眠り姫』が収録されている『山本直樹ホラー作品集成/夜の領域』を入手。さすがに内田百?を数時間で読み切る自信は無かったので。(しかしこんな風に普通に売ってるところが文庫センターの素晴らしさだ)
余談だが、『夜の領域』と一緒に大島弓子の文庫本と、久しぶりに『arne』を買った。速攻で家に帰って机の上にドサドサと置いたら、読みかけの『続 人間コク宝』と滅茶苦茶な世界を形成していたけれど、私的には1本筋が通った光景だった。

で、『眠り姫』三部作読了し、下北沢入りとあいなった。


もともとこの映画は、山本直樹展の会場で流す目的で2003年に作られたもので、それを劇場公開用に撮り直したものらしい。2005年には映像と音楽の生演奏による上映も行われている。終始流れている音楽は実験音楽的で、穏やかな映像とは裏腹に不安感をビシビシ煽る。映像に合わせて奏でられる音を聴きながらの上映会は、いっそう緊張感も増して、かなり面白いものだったろうと思った。

映像もかなり実験的。本当に人はほぼ現れる事は無い。満員電車、雑踏、ファミリーレストランの隣席の聞くともなく聞こえてくる会話、靴音、学校内の反響音‥‥気配だけするのに実態はそこには無い、映像にはカラッポな景色が映るだけという不思議なアプローチ。ゆっくりと流れる映像と音声(どんなに小さなものでも)に、こちらはひたすら集中しようとする。せざるを得ない。けれど集中すればする程、うつろになっていく不思議な感覚。上映前に渡された資料の中にあった

  ぼんやりと意識が希薄になっているときに、
  人の眼にはどんな景色がうつっているのだろうか?

という一文を思い出し、何となく理解する。
繰り返し出て来る「ピンポン玉が落下していく」場面は、安っぽい催眠術が取り出した振り子の様に、意識を希薄にしていく作用があり、「ピンポン玉がコーヒーカップにボコリと浮き上がる」場面では言い様の無い不気味さを味わった。

原作には非常に忠実であったと思うし、七里監督の山本作品への愛情を感じたので良かったのだけれど、私が西島秀俊好きというのが災いしたのか、西島が演じる「野口」=「顔が長い男」という設定がどうしてもすんなり頭で描けず、浮かんでくるのは西島の顔ばかり(あの人、顔長くないからね)。サラッとしているくせに独特である彼の声が「声のみの出演」のせいで、余計に主張していたのかもしれないけれど、それでも声だけであそこまで聞かせる演技が出来るというのは、やはり凄い事だ。

山本浩司も良かった。実は彼を「ああ、これが山本浩司」と認識して観たのは『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が初めてで、あとは『トニー滝谷』のメイキング作品『晴れた家』のナレーションくらいなもので、今ひとつその魅力がわからずにいたが、今回の「達ちゃん」は良かった。

声ではメインの3人(つぐみ、西島、山本)以外の人達が(とくに達ちゃんママ)、妙に声優声な感じがして、メイン3人がかなり自然であるせいか、違和感を感じたのだけれど、何しろ「声」だけで、それが誰であるかを見る側にわからせなければならない、という縛りの中では、あのくらいでなければ成立しなかったのかも、とも思えたし、もしかしたら意図的にものだったのかもしれない。

それと、映画自体には全く関係ないのだけれど、私は映画(それも静かな、シリアスなものに限って)の席運が悪いというか、昨日もたまたま隣になったカップル(会社の同僚かもしれない)の女性が、開演早々にお菓子の袋を「パリ‥‥パリパリ‥」とやり出して、むんぬ凄く気が散った。あんなに狭い劇場(キャパ50人)で、しかも「音」が頼りの作品で、あれはない。どういう作品なのか知らずに来ていたとしたって、最初の2〜3分見れば「コレが音を出してはマズい作品だ」という事くらいわかりそうなものなのに。どれだけ腹が減ってたのかは知らないけれど、「ぐううう」って腹の虫の鳴き声を聞かされた方がマシだった。よく見りゃパンプス脱いでたし。上映終了後、客電が付いてふと隣を見たら、カントリーマームやら煎餅の袋が見えて、何か、脱力。カントリーマームのパッケージがあんなにしょーもないものに見えたのは初めてだよ。
それだけが残念ポイント。


えーと、ネタバレにならないためにあらすじは一切書いていないので、何の事やら意味不明という感じでしょうが、この辺で仕事に戻ります。

最後に資料の中にあった七里監督の文章の中から一部抜粋。

 それは例えば、夜の満員電車。
 つり革につかまり、ぼんやり窓外の闇に目をやる、会社帰りの女性。
 その生気を失った表情に、思うのです。
 ああきっと今、彼女の目に人は映っていない。
 人のいる鬱陶しい世界から遠ざかって、正気を保ってる。



※2007年11/17(土)よりユーロスペースにてレイトショー公開です。
 公式サイトhttp://www.nemurihime.info/
 興味を持たれた方はぜし。
c0138553_12475293.jpg

[PR]
by sakamotochiaki | 2007-11-06 12:49 | Comments(0)